コラム

愛知目標「完全達成ゼロ」という厳しい報告

愛知目標「未達成」という現実

2020年9月15日、国連生物多様性条約事務局(Convention on Biological Diversity)が愛知目標の全20項目について、完全に達成できた項目はなかったことを発表しました。

愛知目標とは、2010年10月に愛知県名古屋市で開催された生物多様性条約第10回締約国会議、通称「COP10」で採択された『生物多様性戦略計画2011-2020』においてまとめられた、地球上の生物多様性を保全するための国際的な目標です。

2020年までに達成させる目標として「人々が生物多様性の価値と行動を認識する」「生物多様性の価値が国と地方の計画に統合され、適切な場合には国家勘定、報告制度に組み込まれる」「すべての関係者が持続可能な生産・消費のための計画を実施する」「森林を含む自然生息地の損失速度が少なくとも半減、可能な場合にはゼロに近づき、劣化と分断が顕著に減少する」など、2020年までに完了させるための20項目を定めていました。

これらの目標のうち「一部達成」「達成見込み」と評価されたのが「侵略的外来種の制御や根絶」「陸域17%と海域10%を保護区に」などわずかに6項目。残り14項目は未達成とされ、完全に達成した項目はゼロでした。

未達成の背景はさまざまであることが予想されます。地球温暖化による異常気象やそれによって地球環境に変化がもたらされていること。複数の国々で、環境保護を軽視するリーダーが台頭してきたこと。野生動物の個体数も大幅に減少しているという報告もあります。

愛知目標が「国際的な目標」として掲げられているにもかかわらず各国の達成状況に対する管理や罰則がなかったことも、少なからず影響はしているでしょう。

次の10年を見据えた「ポスト愛知目標」とは

達成がかなわなかった愛知目標ですが、次の指標として注目されるのが2021年5月17~30日に中国・昆明で開催されるCOP15で採択される予定の「ポスト愛知目標」とよばれるものです。

草案は(1)数値を明記した具体的な目標設定があること、(2)生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学-政策プラットフォーム(IPBES)報告書で指摘された「生物多様性に対するの5つの脅威(気候変動、乱獲、土地利用、外来生物、汚染)」への対策が盛り込まれたこと、(3)SDGsと整合するように設計されていること、という3つの大きな特徴を持っています。

愛知目標と同様に20個の目標が設定され、目標1~6はIPBES報告書への対策、目標7~11がSDGsとの整合性がとれるよう資源の持続可能性な利用を促すもの、残りの12~20は個人や国、企業が問題を解決していくための手法が明示されています。

生物多様性保全のために

生物多様性保全は先進国、途上国を問わず世界中の全ての国々が一丸となって取り組むべき問題であることは明らかです。しかし、もうひとつの大きな問題である気候変動、地球温暖化の問題と違って、「取り組まないと具体的にどうなってしまう」という結果がわかりにくいため、気候変動の問題にくらべて各国における政治、経済面での取り組みは遅れており、ゴールは遠のくばかりです。

市民の私たちが身近な生物多様性保全を考えてできることからはじめるのはもちろんのこと、国家レベル、さらに国と国を超えての政治や経済、具体的な生物多様性保全活動における協力関係の強化が求められます。

参考ウェブサイト

環境省:生物多様性 
高知新聞:【愛知目標未達成】生物多様性の維持ピンチ
WWF:愛知目標(愛知ターゲット)について
共同通信:生物保全「愛知目標」達成できず 世界で森林減少、種の絶滅が進行 
日経ESG:「ポスト愛知目標」の草案を発表

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