*このプロジェクトは公益財団法人りそなアジア・オセアニア財団の助成を受けて実施しています。
2020年12月11日に、愛知県豊橋市の豊橋動植物総合公園(のんほいパーク)とボルネオ島コタキナバルのロカウィワイルドライフパーク(LKWP, Lok Kawi Wildlife Park)をZoomでつないだイベントが行われました。
今回のイベントは一般のお客様向けではありません。のんほいパークで行われているゾウの飼育方法や技術を、トレーニングの様子などをLKWPのスタッフへ伝えるためのいわば「ゾウの飼育技術勉強会」でした。
LKWPのスタッフは施設のサイズやスタッフの数と比較して多すぎる頭数の保護ボルネオゾウを、少ない予算をやりくりしながら飼育しています。日々の仕事に追われ、なかなか新しい技術や知識を勉強する機会がありません。現地スタッフのために何かできることはないかと、年単位で企画を練っていました。
理想的なかたちは日本のゾウ飼育担当者がLKWPを訪れて、直接交流していただくことです。プロジェクトを立案していた当初は、そうする予定で計画を立てていました。しかし3月ごろから世界は一変し、いまは日本もサバ州もコロナ禍による厳戒態勢が続いています。ボルネオ渡航の道が完全に絶たれているなかでもっとも良い方法は何かと考え末にたどり着いたのがZoomによるライブ中継でした。
のんほいパークからはプロジェクト担当者の木谷良平さん、松野真希子さんにご参加いただきました。
大きな放飼場で竹を食むゾウの姿からイベントはスタート。のんほいパークの施設説明を挟み、ゾウの足の裏を洗う様子を担当者が説明してくださいました。大きなゾウが後ろ足、前足をひょいっと上げておとなしく担当者に足の裏を掃除してもらっている様子に、映像を見ている現地スタッフからは感嘆の声が。1日の飼育スケジュールや餌の種類、量なども細かく教えていただきました。
のんほいパークから「質問はありますか?」という声に画面の向こうから「毎日トレーニングしているの?」「係留はしなくて大丈夫なの?」「池の水はどのくらいの頻度で変えるの?」と、積極的な質問が飛びます。木谷さんが「そろそろ次に行かないと時間が…」と心配してしまうほどの熱心さ。
正直なところ、のんほいパークとLKWPの状況は施設の大きさ、立派さ、財政状況、管理といった面で大きく隔たりがあることも事実です。そんななかで日本のトレーニング方法を見せることは「そんなこと言われてもこっちではできないよ」と逆に士気を低下させてしまうのではという懸念もありました。
しかしそれは杞憂に終わり、LKWPのスタッフにとっても有意義な時間になってくれたことと思います。
ゾウのほかにも、熱帯のマレーシアではまず見ることのないペンギンやホッキョクグマの様子も紹介。プールに投げ込まれたエサのサカナをめがけて飛び込むホッキョクグマの迫力ある映像は圧巻でした。
すべてがスムーズにいったわけではありません。ネット回線のトラブルで途中に中断があったり、ところどころ音声が拾いにくかったりと改善事項もいくつかありました。それでも、とても細かいレベルで日本の動物園でのゾウ飼育の様子を伝えられたことは、とても意義のあるイベントでした。
オンライン飼育勉強会はシリーズとして、今後も続けていく予定です。