サバ州政府は2022年6月28日にキナバタンガン川流域のスカウ地域周辺の6605平方キロメートルを国連教育科学文化機関(UNESCO)の人間と生物圏(MAB)プログラムに基づく『生物圏保存地域(Biosphere Reserve, BR)』として登録することを2年かけて目指すことになりました。
2022 年 8 月 3 日にはUNESCO、現地環境保護団体のHUTAN、サバ州生物多様性センター(SaBC)の3つの団体がスカウ地域をBRに指定するプロジェクトを進めていくことで合意しました。
生物圏保存地域(BR)について
生物圏保存地域とは生態系多様性が豊富で、さらに地域の自然資源を活用した持続可能な経済活動を進めるモデル地域のことで、生物多様性の保護を目的に「ユネスコ人間と生物圏(MAB)計画」の一環として1976年に開始されました。ユネスコ人間と生物圏(MAB)計画とはUNESCO’s Man and the Biosphereを意味しています。
ユネスコが人間(Man)と環境(the Biosphere = 生物圏)との関係について、調和の取れた関係を築き上げるための科学的な調査・研究、情報交換を行うために発足させたものです。
詳しくは文部科学省のウェブページを御覧ください。
画像:ユネスコエコパークー自然と人の調和と共生ー2020年12月文部科学省作成PDF
BRとして登録されるには、3つのエリアに分かれて管理ゾーンが必要になります。
核心地域-景観、生物多様性の保護のために厳重に保護される場所
緩衝地域-核心地域を囲む、もしくは隣接しており、科学的研究や教育などの活動に使用される場所
移行地域-社会文化的・生態学的に持続可能な人間活動を促進する場所
日本での認定地域
日本ではBRという言葉自体あまり聞き馴染みがありませんが、認知度を高めるために「ユネスコエコパーク」と呼んでいます(この呼び名も認知度が高いかと言われると実感はありません)。
認定地域数が134か国738地域※ あるうち、日本のユネスコエコパークは10ヶ所です。※2022年6月現在
最後に
キナバタンガン地域が世界的な機関に認められるようにプロジェクトを積極的に行うことはとても前向きなことであると考えられます。実際に登録が認められたら観光業が発展し現地の人の暮らしが活発になるのではないかと思います。ただ、「ユネスコエコパーク」の取り組みは、1970年代から始められたのにも関わらず、その認知度は低いです。
環境問題に関心のある現地の人に、キナバタンガン川流域のスカウ地域周辺が「ユネスコエコパーク」として登録されるようにプロジェクトが行われていること知っているかを尋ねたところ、本人は知ってはいるけれどテレビなどのメディアでは取り上げられておらず、あまり公表されていないとの回答をいただきました。現地においても環境問題に関心のある人以外にはあまり知られていないのかもしれません。日本だけではなく、現地ともに「ユネスコエコパーク」の認知度の向上が今後の課題であると考えます。
また、11月19日に行われるマレーシアの総選挙の影響により、現在のサバ州観光・文化・環境大臣が変わってしまうと、このプロジェクトに影響が及ぶのではないかとも懸念されます。「ユネスコエコパーク」の認知度の向上、そしてプロジェクトが継続されるのかについて今後も見守っていきたいです。
インターン:武田茉由子