BESでの井戸掘りスタートしました 2020年3月
2020年3月9日、豊橋総合動植物公園職員の田中孝佳さん、木谷良平さん、長屋篤さん)、上総掘り専門家の河西陽氏と村田康行氏、森井で成田空港を出発。ボルネオ島のコタキナバルでBCTJ現地スタッフの岸優子氏と合流し、BESの井戸掘りをスタートしました。
本来なら旭山動物園園長でBCTJ理事の坂東元氏、職員の佐橋智弘氏、酪農学園大学教授の金子正美先生も同行する予定でしたがマレーシア政府がコロナウィルス感染対策として北海道からの入国を禁止したため、残念ながら断念せざるを得ませんでした。
3月10日
まずは井戸掘削地周辺の草刈り、井戸用に試掘していた穴の水抜き、井戸掘りの資材、発電機や排水ポンプの搬入などを確認します。掘削地はゾウを飼育しているパドックより低い位置に作ることになっていて、急で滑る斜面を下っていきます。
周囲に生い茂っていた草を刈ったせいか穴は以前より大きく、また水を抜くと思っていたより浅く見えました。あとで考えると、試掘してからは時間がだいぶ時間が経っているため壁面が崩れ、浅く、広くなったのだと思います。
この日、豊橋チームはサンダカンのセピロク・オランウータン・リハビリテーションセンター、マレーグマ保全センターを見学。夜はKOPELスタッフとの打ち合わせ、作業を手伝ってくれるという別ルートでKOPEL入りしていた酪農学園大学の学生チームへの説明を行いました。多くの人が集まり、熱気にあふれていました。
3月11日
朝から作業スタートです。穴の水を抜ききり、井戸の支柱をたて、起工式を行いました。河西氏、KOPELのハシムさん、現地のBCTから参加した職員のジミーさん、豊橋の田中さんが挨拶をされた後、日本式にお神酒を井戸孔に振り入れ、支柱に設置しました。
参加したのはKOPELから参加したスタッフ、BESのスタッフ、BCTの職員とインターンの学生、酪農学園大学の学生やガイドなど。普段あまり見ることのない光景に、みなさん興味津々の様子でした。
起工式を終え、足場を作ります。井戸の位置を決め、支柱を6本立て、上部と下部に横の支柱を固定させる作業です。今回の井戸は現地で調達できる材料でつくることを考えていたので材料はなるべく竹を使い、人間の重みで竹に負担がかかってしまう部分は木材で補強しました。上部にスプリングの役割として「ハネギ」と呼ばれる部品ををとりつけます。部品を固定するためには竹を削ってかませ、縄で固定させます。釘を一切使わないので再利用も可能な優れものです。
井戸孔には塩ビ管を立てて入れ、できるだけ下に押し込みます。専門家の河西さんと、河西さんと一緒に日本で上総掘りの練習をつんできた豊橋チームのスタッフは息の合った作業ぶりを見せていました。現地スタッフも見よう見真似で手伝います。
学生たちは、池に詰めるための石拾い。容赦ない日差しの下、腰をかがめての石拾いは地味で大変な作業です。豊橋チームは竹ひごを作り、鉄管と竹ひごをつなぐ作業にかかりました。竹ひごと竹ひごをつなぐには、竹ひごを削ってかませ、つなぎめ鉄輪で補強する工程が必要になります。
元漁師だというKOPELスタッフは竹の扱いが上手く、日本人の手元をみながら同じように竹を細工していました。心強い!
3月12日
この日も終日作業です。恨みたくなるような晴天で、とにかく暑い!急斜面の下で作業をしているので、風も通りません。
昨日までで準備は完了し、今日からはいよいよ井戸掘りをスタートします。
竹ひごをつなげた鉄管は、つないだ部分が折れやすいので取り扱いには注意が必要です。数人が鉄管に手を添え、ゆっくりと井戸孔に入れていきます。
井戸を掘る方法はシンプルで、「橦木(しゅもく)」と呼ばれる取っ手をつけて、鉄管で穴の底を突くように掘っていくと、ハネギの弾性で鉄管が上に戻ってくる仕組みです。これを地道に繰り返します。
力がいるわけではありませんが、高温多湿の条件下での作業は2分も続けると息が上がってきます。日本人スタッフ、男子学生、KOPELスタッフ、BESスタッフと交代で作業を繰り返します。その間、酪農学園の女子チームはひたすら石を拾ってくれていました。
午後になると疲労のためかKOPELスタッフの中で作業の譲り合いが始まり、途中、藪の中で横になる人も。1人ごとに2分のタイマーをかけて時間を区切り、カウントダウンで盛り上げての作業が夕方まで続きました。
3月13日
日本人スタッフとKOPELスタッフ、BESスタッフで井戸掘り作業を続けます。鉄管は突き続けると中に掘りくずの土が溜まっていくので、時々引き上げて、2~3人が力をこめて先端部を外してやらなければいけません。
堀りくずの土を検分するとはじめは粘着性の強い粘土が続き、掘り進めていくにしたがって少し質が変わるのがわかリマス。掘り進めていくにつれ井戸孔に水が溜まっていくので、スイコを使って水を掻き出します。
作業途中、鉄管をつけた竹ひごが折れたり、井戸孔に物が落ちたりもしましたが、なんとかこの日だけで3mほど掘り進めました。
作業後、KOPELのワーカーからは暑さを避けるため早朝や夕方に作業したいと提案されましたが、BESは国道から2kmの奥地にあり、しかも四駆を使わないと辿り着けないでこぼこ道を通ります。早朝だと彼らを連れてくる車を手配することもできないのです。
BESを後にし、2つ目の井戸を作る予定地であるKOPEL エコキャンプで現地スタッフとともに井戸孔の位置を確認しました。
3月14日
最終日です。午前中しか作業時間がなかったため堀り作業は進めず、日本人スタッフが現地を離れたあとも引き続きスムーズに作業を進めてもらえるようBESのスタッフに作業手順をつたえたり、道具のメンテナンスを行ったりしました。本来は竹ひごの先に鉄管やスイコを付け替えて作業を進めるのですが、部品の付け替え作業を現地スタッフだけで行うのはハードルが高いと判断し、鉄管+竹ひご、スイコ+竹ひごの道具をその場で作りました。
14日のお昼にKOPELを出発し、サンダカン空港からコタキナバルへ。15日にコタキナバルにあるロッカウィ・ワイルドライフパークを見学した後、深夜便で成田空港へ。16日早朝に成田へ無事到着し、今回のイベントも終了です。
KOPELスタッフ、BESスタッフと初めての共同作業となった今回の出張でたくさんのことを学びました。言葉の問題や仕事のやり方に考え方の違いも多く、戸惑いもあります。
井戸掘りは地味で根気がいる作業です。次回の出張予定は6月。日本チームが再訪するまで、現地スタッフがトラブルなく作業を続け、穴を掘り続けてくれることを願っています。
また今回は、世界的に広まっているコロナウィルスの影響を受けました。滞在中にもマレーシア国内での感染状況が日々悪化し、マレーシア政府は3月18日にロックダウンを決定しました。
KOPELの事務所もしばらく閉鎖することになってしまい。現状ではKOPELのスタッフがBESに行くこともできません。当面の作業はBESスタッフにゆだねられます。BESのスタッフとはスマホのSNSで繋がっているため、日本にいても経過がわかるのが嬉しいです。
コロナウィルスのせいで状況が悪い中、参加して汗を流してくださった方々、派遣してくださった豊橋市、さまざまな形で協力いただいたKOPEL、BES、BCTの現地スタッフ、また助成くださっている三井物産環境基金に深く感謝いたします。ありがとうございました!